遺伝子治療はさまざまな可能性をもっているとともに、その効果を解明するためには長い時間を要する医療でもあるのだ。
ガン遺伝子の作用ガンが治せる日は、いつやってくるのか。
残念ながら、いまのところ、この問いに答えられる専門家はいない。
それどころか、ガンは1981年に日本人の死亡原因のトップになってからも増え続けて、1993年には23万人を突破、いまや死亡者の4人に1人以上がガンであるのが現状だ。
しかし、ガンが発生するメカニズムについては着実に解明が進んできて、細胞のガン化に遺伝子がどう関与しているか、発ガン物質は遺伝子にどんな影響を与えるのかなど、発生過程のナゾについて説明がつくようになってきた。
「なぜ普通の細胞がガン細胞に変わるのか」という根本的な疑問にたいしては、なかなか手が届かないものの、「どんなプロセスによって細胞がガン化するのか」という、ガンが生まれる経緯についてはくわしく調べられるようになったのである。
ガンの原因については、重大な病気だけに昔からさまざまな説が提出されてきた。
「ノーベル賞の歴史上で最大の授賞ミス」といわれているのもガンの原因説に関するもので、1926年にデンマークの病理学者Y・Fが「寄生虫原因説」を評価されて、ノーベル医学生理学賞を受けている。
寄生虫の一種である線虫が胃ガンを起こすことをネズミを使った動物実験によって証明した、というのが受賞理由であった。
この説は、のちに特殊なネズミの系列だけに起こる現象であることがわかって、発ガンのメカニズムを説明する説としては否定されている。
ちょうどその頃、東京帝国大学の病理学者だった山極勝3郎が、ウサギの耳にタールを塗り続けて発ガンに成功、「反復刺激説」を発表していた。
フィビガーと並んでノーベル賞候補として推薦されていながら、「はっきりした証拠を欠いている」と受賞しなかったのだが、いまとなってれば″刺激による遺伝子の変異″を示唆した点で、山極のほうが受賞者にふさわしかったのである。
ガンが遺伝子の異常によって起きる病気であることが明らかになったのは、1980年代に入ってからだ。
発ガン物質や放射線などによる刺激や遺伝的な特性などによって、ある種の遺伝子輪に損傷が起きると、細胞がガン化の方向に進むことが観察されるようになった。
そして現在では、鴎ふつうの細胞に含まれているガンを起こす働きのある遺伝子と、ガンを抑制する働きをもつ抑制封遺伝子の2種類が、ガンの発生に関係していると確認されている。
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